「雪影-setsuei-」まとめ

山また山に山廻り、山また山に山廻りして、行方も知らずになりにけり
そもそも山姥は、生所も知らず宿もなし
唯雲水を便りにて至らぬ山の奥もなし
春は梢に咲くかと待ちし、花を尋ねて山廻り
秋はさやけき影を尋ねて、月見る方にと山廻り
冬は冴え行く時雨の雲の、雪を誘いて山廻り

こころの新書

まず、普通だったら間違い無く一瞥だけしかしないタイトルの本なのだが、「サンカの民と被差別の世界―日本人のこころ中国・関東」と、時節柄このテの話題の本を読みたかったので。
一読しても説教めいたり大上段でもセンセーショナリズムでもジャーナリスティックにでも書いてる訳で無く、作者の見聞きした事柄を淡々と、悪い意味でアクが強くないので。
で、今の所、このシリーズは時節柄とは別に、もう1・2冊は読むつもり。

それにしても五木寛之だよ。
まさかこんな大御所の作品を自分が読むとは。
自分としては、二・二六のハナシかと思っていた「戒厳令の夜」、そのままエロゲのシリーズににもできそうな「四季」シリーズとか、結局ここに行き着いてしまうのか、アナタは土門拳ですかと「百寺巡礼」の印象しか無かったのだが。
ああそう言えば実家に「青春の門」があったな。

タイトルからも分かる通り、「被差別部落」の問題と密接に絡んでいるので、実はコメントしにくい…

それを意識して作ったのかどうかは不明だが、「雪影」においても中々興味深い描写が二点存在する。

一点目は、この物語世界のフレームワーク。
里の民が脊椎反射的に山の民を嫌うのは、里の民がかつて飢饉の時に山の民の人肉を食べていた、という自己嫌悪?に近い感情とでも言うか、そういう忘れたい過去を呼び起こされるみたいな。
しかしながらそういう約束で、冬の間だけは里で住む事を認められてるのが山の民な訳で。
なので、持ちつ持たれつの世界観を上手く作ってると思った。
もっとも、物語世界における2006年にも山の民の死体を冷凍保存してるのと1 、壮年以上の年齢層だけが山の民に特殊な感情を、逆に言うと若者は「何それ?」という状況からして、戦後の食糧難の頃まで存在してたのかな、と思わなくもない。
まさか江戸時代の飢饉を未だに引きずってるとも考えにくいのだが。

二点目は、山の民の深雪が今風に言えば「引き篭もり」してたのは、深雪がヒッキーでも人嫌いでも無く、ただただ、単純に里の律や法を守ってただけじゃないか? と。
と言うのも、成美に対しては普通に接してたので喋りが苦手でも無さそうで。
けど、一体どういう構図なのか興味あるが、修二と深雪が買物に行った時のドタバタ劇(一方的に深雪姉さんが舞い上がっていただけだが)にみる深雪姉さんの嘘みたいな世間知らずさって一体…と思うが。

であるが、まだ「霜神さま」との兼ね合いまでは自分の中では上手くまとまっていない。
霜神のモチーフから連想したのは、「昔々、旅の者が一晩の宿を借りたいと言ったので主人は泊めました。翌日、旅の者は宝物になっていました。そしてその家は栄えました」だったか。
これを何処で知ったのか?
高橋留美子の人魚シリーズか、小松和彦の「異人論」か「悪霊論」のいずれかだったと思うので、書店でこれらの書物2 を読んでみた所、どうやら小松和彦の著作かららしい。
いわゆる「異人殺しのフォークロア」というらしい。
これ、ネタをばらしてしまうと、家の者が殺したんだよな。
今風に言えば強盗殺人死体遺棄とでも言うか。
なので、「しかし、その家の子孫からは代々カタワが生まれ、村人は旅の者の祟りだと噂しました」みたいに続くと思う。
しかも、その当時旅をしていた|できたのは常民では無いし。
あ、お伊勢講は別かも。
果たして、小松和彦の意見が学会にどう影響してるのか分からないけど、当時の自分には結構衝撃的だった気がする。
何かね、忘れたい過去を霜神という形で残しておくものかなぁと。
例えば、「ひぐらしのなく頃にの「綿流し」はある意味、忘れてはならない自分達のアイデンティティを継続するために祭りなので納得できるのだが。
一方で、「山に迷い込んだ里の男と子供を作り、春の訪れと共に男は子供を預かって育てる。その子をまた山に返すと宝物や力を授ける」という紫子の台詞と、ここまでで言ってる事と矛盾してる位にグチャグチャになってる。
なので、修二が紫子に対して深雪に霜神を舞う役(奉納舞の歳神?)を推薦したと修二が言った時に見せた深雪の涙の意味って、未だに良く分からない。

閑話休題。
サンカって、自分の中では山の多い地方、例えば、フォッサマグマ以東の世界の出来事と捉えてたけど、そうでもなさそうだ。
確かに中国山地があるけど。なのでもしかしたら丹波出身のオヤジの子供の頃には居てオヤジも覚えてるかもしれない…ちょっと気楽に聞くに聞けないが。
一方で海の民とでも言うか、家船って全く知らない。
瀬戸内海周辺にそんな世界があったとは。
今はどうか分からないが、自分が小学生の時、部落問題を考える授業は存在した。
けど、根幹を山や海の民に求める、という所までは学習していないと思うし、全てがそこに行き着くとは思えないが。(別に五木寛之もここまで言い切っていない)
何と言うか、寝た子を起こすみたいでここに書くのは苦々しいのだが、浅草弾左衛門に関しては全く知らなかった。
また、フーテンの寅さんを初めとする下町の風景。
浅草や(新)吉原あたり。
「下町」というコトバに全く何の感慨を抱かないのでイメージが沸かない。
けど、そういう視線で「カルタグラ」をやり直すのも一考かと。

自分が覚えてる、こういう混沌とした世界、聖と俗が紙一重の世界って何だろ? と思い返してるのだが、あまり思い浮かばない。
強いて言えば、加古川の祭りに居た傷痍軍人だったかなぁ…みたいな。
なので、次にこちら方面で田中ロミオがシナリオ書く時は、隠し念仏でお願いします…ってハナシになるか?

と、思うのだが、この様なネタを題材にできるのも、五木寛之とかの戦中世代までだろうな、と。
自分の親の少し上か。
既に自分達の世代では、その様な出来事があった事さえ知らないし。
けど、肌感覚だけで言うと自分達の世代までならば何とか感覚的にでも理解できるんじゃないかと思うし、阿呆みたいだが、知っておかなければならないんじゃぁないかと思う。
教科書に書かない歴史はここにも存在するんじゃぁありませんかと。

さて、雪影を鬼畜公園氏に切々とパワープッシュしたトコロ、
「熱いね軍曹。じゃその辺をログに上げてよ」
「え? そりゃ幾ら何でもイタ過ぎですよ」
「だと思うけど読んでみたいなぁ、ぜ・ひ・と・も」
「そこまで言うなら考えますけど、本家には見られたくないですねぇ」
「じゃぁ、小説版が出たら読むよ」
「いやいや、VFB含めてオレが買ってあげますから。と言うより出ませんよ…多分」
と、見事に返り討ちにあったのでその一環としてちょっと書いてみた。
他にもこのノベルは色々と思う所がある。
多分それを書けば、ネットで一番雪影を語ってるヒトになれるという自負はある。
イタいけど。

例えば。

  • 長男なのに何故に「修二」なのか? …語呂が良いだけ?
  • 幼少の修二が祭りに行った時に手を引いていたのは誰(修二の母or深雪の母?)なのか?
  • そもそも修二と深雪は血が繋がっていないのか? …個人的には従姉弟かと
  • 深雪が人外で無い理由
  • True EndとFateの桜エンドとの比較考察
  • 深雪(なのか?)と赤子の写真って?
  • 姉さんハァハァの時にさり気に織り込まれている襖が閉まるSEと翌日に深雪がぎこちなかった件
  • 鳥羽老人って何者?
  • 修二が山の民だったハァ?
  • True End以外での深雪って? (涙
  • シスコンの行き着く先はマザコンか?(ぉぃぉぃ)

とか…

2006/06/25

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  1. 1. 「雪影-setsuei-」まとめ
  2. 2. 山また山に山廻り、山また山に山廻りして、行方も知らずになりにけり
  3. 3. 子守唄?
  4. 4. こころの新書
  5. 5. 個人的には意外としか
  6. 6. その後
  7. 7. 更にその後

Footnotes

  1. 1. 捨てるに捨てられないけど。

  2. 2. 何せ読んだのが10年以上前で本は実家にあるし。